The Last Detail

旅と治療の記録。

北海道DAY⑦ ~釧路14:16発、帰宅0:45~

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旅の最終日がきた。

釧路から千葉県某八千代市の自宅へと帰らなければならない。

釧路を午後2時すぎの列車で発ち、午後20時発のJAL女満別から羽田に帰る。本来は釧路空港を使いたかったのだが、JALマイルの空席が女満別空港しかなかった。

そもそもこの旅は当初から計画していたものではなかった。12月から抗がん剤治療が始まる予定だったのだが、11月下旬に主治医と話し合った結果、諸事情から年明け以降に抗がん剤治療を始めることになった。そこで急遽、年末年始の予定がなくなったので北海道旅行を計画したのが、年末の一か月前。既に多くの便が満席で、たまたま女満別の便に空席が沢山あった。要するに、今回の旅は様々な偶然が生み出した旅であった。不思議な旅の縁もある。

 

私の病気は類上皮肉腫という希少癌なのだが、適合する抗がん剤が日本国内にはない。肉腫についてはアドリアマイシン(ドキソルビシン)を基本的には投薬するようだが、過去に投薬したデータによればあまり治療効果が見られず、副作用に苦しむ結果に終わるパターンが多かったらしい。そこで抗がん剤臨床試験に参加する方針を決め、私の病気に適合しそうな抗がん剤臨床試験が発表されるまで当面は抗がん剤治療を保留することにした。

 

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午前中は何もやることがなかったので、釧路駅前のタイムズのカーシェアで車を借り阿寒湖に行ってみたのだが、大して目ぼしいものもなく、引き返して釧路に帰ってきた。要するに、無駄足のドライブで終わった。

 

午後1時前に釧路駅に戻ってきて、列車が発車するまでの一時間、お土産屋さんを徘徊したり、待合室でのんびりしていた。千葉県までの長旅が始まるのだ。のんびりしていよう。

 

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で、時間になってホームに行くと、隣のホームに数日前に新得駅で見かけた国鉄色キハが入線していた。

お久しぶりです。これでお会いするのは3回目ですね。不思議なご縁ですね。ストーカーの如く私の旅程通りに後ろをついてきましたね。

 

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峰不二子と共に、網走駅へ向かう。

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行先は網走。この旅のスタート地点へ戻るのだ。
3時間の列車旅。満席だった。網走駅から特急で札幌へ向かう組と女満別空港に向かう組、この2グループが主な客層であろう。

車窓に貼られたルパン三世のステッカーと共に、列車は釧路湿原を抜け、知床を抜け、オホーツク海へ向かっていく。

途中でタンチョウという鶴のような美しい鳥を見た。

どんな鳥か気になる方はGoogle先生に聞いてください。

 

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釧路湿原

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惜別ではない。

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知床斜里駅。途中下車できない旅なんて...

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線路が雪で埋まっている。

釧路湿原の辺りでは積雪が少ないように感じられたものの、やはりオホーツク海が近づくにつれて雪の量がどんどん増えていく。

 

列車は網走駅に入線した。

旅の終わりを意味する。

 

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そう。この改札口から今回の旅は始まったのだ。

 

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思い出の網走駅。

網走から半時計周りで旭川富良野、帯広、釧路を経由して周回してきたことになる。

一週間の旅。

一週間前と一週間後の網走駅。

何も変わらない網走駅だが、全く違う印象を受けていた。

今回の旅で一番記憶に鮮烈に残った駅。

駅前のホテルに泊まり、駅前のトレン太くんで車を借りた。

それだけの思い出だが、もう既に不思議な愛着がこの駅に沸いてしまっていた。

次に訪れるのはいつなのかわからない。

どうか廃線にならず、廃駅にならず、いつか再び訪れる日まで存続していて欲しい。

 

北海道は高齢化と比例して急速に衰退している。

今回訪れた場所が次回もそこに存在している確証なんて全くないのだ。

 

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網走駅前に待っていれば空港バスが来るのだが、何となく街を歩きたくて網走バスターミナルまで歩いてみた。

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網走湖を抜け、空港へ向かう。

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こ、このタイミングですか???

 

さて、二日ほど前から新千歳空港が雪の影響で発着できずパニックになっていることは知っていた。私は油断していたのだ。

「新千歳は日本海が近いから雪の影響をモロに受けるが、女満別は道東。雪の影響はないだろう」と。

実際、空港の積雪も大したことはなかったし、風もなかった。

何も問題ないと思われたのだが。。。

 

 

「566便を見てみよう」

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あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

なんということでしょう。

遅延しているではありませんか。

使用機材が羽田空港を30分遅れで離陸した為に女満別の着陸が30分遅れる。私が乗る折り返し便も30分遅れる。なるほどね。理解しました。日本各地の遅延が連鎖的に広がり、あらゆる便に遅延が発生している訳だ。安倍政権が悪い。

 

別にね、30分くらいの遅れなんて気にしないんだよ。

何が問題かって、当初の予定では羽田着陸が22時だったんです。そのまま22時半の津田沼方面の終バスに乗って帰宅する予定だったんです。

コロナの影響で、津田沼方面は23時以降のバスが全部運休になっちゃってるんですよ。

つまり、離陸が30分遅れれば着陸も30分遅れる。するとどうでしょう。津田沼方面の終バスに間に合わないではありませんか。

 

 

いや、まだ保険はある。

22時53分発の京急エアポート快特。これに乗れれば、家まで帰れる。。

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21時に離陸しました。さよなら北海道。

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市原上空。

あら、なんということでしょう。
機内から私の住む八千代市が見えるではありませんか。

あれが国道16号ですか?

なんなら、職場が見えるではありませんか。

落下傘積んでませんか?

落下傘降下すれば帰宅できるのですが。

 

某ローカル線の五井駅アクアライン、海ほたるを上空から眺めながら、羽田空港へ無事着陸。

 

この時、22時30分。

 

搭乗口を出たのが22時40分。

 

預け荷物を受け取ったのが22時50分。

 

さようなら、京急エアポート快特

君を忘れない。

いつか会えるといいね。

 

困った俺はGoogle先生に聞いてみた。

先生「リムジンバスで千住大橋駅に向かえ。そこから京成の終電に乗れば帰れるぞ」

 

その手があったか。

流石Google

ということでバス乗り場に並んでいたところ、係の人に乗車券を持ってるか聞かれる。

「持ってません」

係員「予約で満席なので、キャンセル待ちということで列から離れていただけますか?」

 

 

は?舐めてんのかお前。

Googleさあ、期待させてこれはないやろ。

誰が悪いんだって?

誰も悪くないよ。

飛行機の遅延だって別に機長が悪い訳じゃないよ。

誰も悪くないんだ。

 

結局、23時17分のモノレールに乗り、東京駅から終電の総武快速津田沼に行き、そこから久々に乗ったタクシーで0時45分に帰宅。

今は自動車学校の教官の仕事をしているのだが、過去にタクシー会社で3年間働いていたことがあるのでタクシーの運転手さんと話しが弾む。

無線の迎車がああでもねえこうでもねえ話しながら、旅を終えた。

なんだこの旅の終わり方。

 

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青春18きっぷ。5日間使い切りました。

 

 

北海道の美しい粉雪。氷点下の潮風。凍り付いた海。列車の窓から見える鹿の群れ。

死にかけている私に、大自然の生命力を感じさせてくれた。ありがとう。

まだ訪れていない町もある。稚内、札幌、函館、そして今回の旅で諦めた留萌。

生きていれば、また君と、いつか会うことになるだろう。

 

 

 

 

 

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「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」
正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」
「それは、何の事なの?」
「あいつらの死んだとしさ。ばたばた死んでゐる。おれもそろそろ、そのとしだ。作家にとつて、これくらゐの年齢の時が、一ばん大事で、」
「さうして、苦しい時なの?」
「何を言つてやがる。ふざけちやいけない。お前にだつて、少しは、わかつてゐる筈たがね。もう、これ以上は言はん。言ふと、気障きざになる。おい、おれは旅に出るよ。」

 

津軽 / 太宰治

北海道旅DAY⑥ 〜生命の息吹き〜

昨晩はテレビで第九を観て、日本酒を飲んで、そのまま10時には寝てしまった。

あけましておめでとうございます。眠いです。

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朝の5時半に自然と目が覚め、ホテルの部屋から日の出の方角を見ると、そこだけ雲がかかってました。笑ってしまった。知床や納沙布岬で朝の氷点下の冷たい海風を浴びながら凍えて初日の出を待っている人達がいるんですよ!!!たくさん!!!見に行かないでよかった!!

※当初の計画では、大晦日根室で迎えて初日の出を見ようとしていました。

もう一眠りして起きたら6時半すぎ。やばい。

急いでシャワーを浴び、着替えて朝食会場へ。

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東横インと違ってプリンスホテルのバイキングは豪華で最高です。

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朝食会場から見える朝陽を浴びた釧路の港が美しい。

新年という感じだ。綺麗に晴れてよかった。

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朝8時前には釧路の改札を抜けた。花咲線は100周年。

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今日は花咲線に乗る。花咲線は100周年ということもあって、だいぶ気合いが入っている。
いつものディーゼル車も100周年仕様とちょこっとだけ豪華に。

しかも2輌に増結!(帰りは1輌だった)

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ね?ちょっとだけ豪華でしょう?

なんか、テーブル席になってる。背もたれは木。まあ背もたれに関してはね、木だと固いから、従来の薄いクッションマットで良かったと思いますよ。JR北海道の上層部がなぜGOサインを出したのかはわかりませんが。。固い背もたれ、嫌でしょう。しかも冷たいし。デザイン重視で勘違いしちゃったんだろうね。

 

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花咲線で楽しみだったのは、圧倒的な車窓。これにつきる。

快晴の元旦に、約40年前に製造された列車に乗りながら道東の太平洋の海原を眺めるなんて、最高じゃないか。

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海が凍っている。魔法だ。

花咲線はどんなところを走っているのか?

このツイートをご覧いただきたい。

なんとこの列車、俺が乗っているのである。

実際のところ、私は車窓からこの撮影者を見ていた。

雪が積もる台地に1人で立っている人がいるもんだから、隣に座っていた乗客グループの若者が「すげえ!あんなとこに人が立ってる」と驚いていた。

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赤丸が俺です。

花咲線で凄いのは「動物が多く現れる区間なので非常ブレーキをかけることがあります」と注意の車内放送が流れるところだ。実際のところ今日、俺は野生の鹿を20頭くらいみたし、線路のど真ん中に座ってドカないよくわからないデカい鳥も1羽見た。

多くの野生動物が暮らす線区なのだ。ここは人間の街ではない。動物達の聖域の一部を、人間がお借りしている。そういった場所なのだ。動物達が列車を邪魔しているのではなく、列車が動物達の邪魔をしているのだ。

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そんなこんなで根室駅に着いた。

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「森の恵み」

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折り返しの列車を待つ人々で駅舎内は大混雑。

おそらく初日の出を見た人達であろう。釧路方面の改札口は入場待ちの人達が大行列を成していた。帰りが不安だ。
バスに乗り継ぎ、目的地へと向かう。

 

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相変わらず車窓は美しい。道東の太平洋は荘厳だ。

 

 

 

 

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着いた。

ここが目的地だ。

言葉なんていらない。

日本本土最東端、納沙布岬だ。

 

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遠くに国後島が見える。

 

 

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大自然に根を張り生きている人々は偉大だ。

 

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神と和解せよ。

 

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散策。哀愁ではない。

 

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もはや氷点下の気温にも慣れた。

 

40分ほどで折り返しのバスが来る。

乗り過ごしたら命に関わる。めっちゃ寒い。寒いというか痛い。

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帰りの釧路方面の列車は案の定、超満員。

しかし俺は「これ幸い」と席取り合戦を争う観光客を放置し、運転席の直後を陣取った。座れないなら絶景が見える場所を陣取って立ってればいいのに。馬鹿なのかな。

※しかし3時間立ってるのは、高齢者には辛いだろう。

 

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ドアが開く都度、意味もなく写真を撮る。

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彼は良い職場に就いたな。

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自転車を折り畳んで乗ってくる客もいて大混雑。

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10分ちょっとの遅延で釧路着。

前面扉に「ルパン三世」のマークが描かれている。

この車輌、ルパン三世のラッピング車だった。

「なぜルパン?」と思いGoogle先生に聞いてみたところ、ルパン三世の作者モンキーパンチ氏は、この花咲線沿線の出身だそうだ。それを記念して、1輌だけルパン三世仕様車を走らせているらしい。

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ルパン三世花咲線の沿線住民の誇りなのだろう。

ラッピング車は数年で元の塗装に戻されてしまうことが多いが、このラッピングは末長く活躍して貰いたいものだ。

 

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昭和の香りが残っていた。

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日が傾く釧路駅

 

 

私の旅も終わりが見えてきた。

終わりのない旅なんて存在しない。存在してはならない。

それは生命の摂理に反する。

今の旅はいつかの旅。

やがて旅が終わり、そしてまたいつか、新たな旅が始まる。

大自然の生命が輪廻し続けるように...

北海道旅DAY⑤ 〜「幸福になれると思うな。」〜

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晦日の朝。私は帯広駅前にいた。

今日の旅は少し違う。鉄道ではなく、車を借りたのだ。

 

帯広から30分ほど車を走らせて、目的地に着いた。

 

恐らくここは、日本で1番有名な廃駅だろう。

古いキハが2輌と事業用のラッセル車が保存されていた。

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既に廃止された国鉄広尾線幸福駅だ。

「幸福になれると思うな」という言葉が俺の座右の銘なのだが、有名な廃駅となれば訪れるしかない。

駅舎内は開放されていたが、内側は人間の汚い欲望に汚染されていて、非常に不愉快であった。旅で訪れた場所に、訪れたこと示す痕跡を残さずにいられない人種は一種の精神病ではないか。自己愛主義の権化だ。古い木造のお寺や神社に、観光客が彫った名前や年月が残されているが、あれは彫った人間の劣等な生き方、恥の痕跡を後世に残す愚行であり「異常」としか言いようがない。

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もしかしたら昭和の時代、そうした行為はありきたりで一般な行為だったのかも知れない。しかし、マトモな神経の人間だったら歴史的な建造物に傷をつけるなどということは決してできないだろう。張り物をしたり小銭を投げることすら躊躇する。平成で生まれ育った私達が恋焦がれる「昭和」という時代は、空想上のファンタジーなのかも知れない。実際は恋焦がれる空想よりも下品で、異常で、不潔な時代だったのだろう。

 

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国鉄広尾線を支えた彼は静かに眠る。

開放されていて車内に入れると事前に聞いていたが、入口のドアには「感染対策の為、当面閉鎖」と張り紙が貼られていた。

昨今の観光名所に散見されるのだが、開放することにどれほどの感染リスクがあり、閉鎖することでどれほどの感染対策の効果が認められるのか教えてほしい。

この車輌を閉鎖するなら、初詣の三が日は北海道の社寺を全て閉鎖しろと言いたい。

 

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再び車を走らせて20分ほど、次の目的地。

愛国駅だ。

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愛国駅から幸福駅

「愛国」「幸福」という名の開拓団の名前がそのまま部落名となり、駅名となったそうだ。

過酷な環境下に置かれた開拓団が、自分達に自信をつけ団結力を深める為に素敵な名前をつけたのではないだろうか。それが後世に残され、開拓の100年後、私のような子孫が旅で訪れることとなる。私は美しいと思った。

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運賃表が掲げられていた。

東京都区内まで8400円。

愛国駅から東京都に鉄道で行く人が居たのかは謎だが、東京駅という行き先がなく、「上野駅」なのが時代を感じさせられる。上野駅が東京の北玄関だった時代なのだ。

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「駅」が美しかった時代。色褪せて錆た鉄の色彩が素敵だ。

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ホームの機関車は雪対策で冬眠中。

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駅前には車掌車が放置されていた。昔、待合室として使ったのだろう。

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解体は時間の問題。

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写真の右上にサイン色紙が並んでいるのだが、中には「石原軍団」と書かれたものもあった。サインの扱いが雑すぎではないか?

 

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次の目的地。

スマホの地図に「愛国神社」というものがあったので、何となく来てみた。用事はない。

何もないつまらない神社だ、なんて思ったら、鳥居の左側に古そうな石碑がある。神社の造営記念碑だ。裏側には「昭和12年」と彫られていた。神社に来る楽しみの一つは戦前の石碑が見れること。戦前の石碑の細かな装飾は、天皇の皇威や帝国の威容に溢れていて美しい。

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御神籤は末吉でした。不安だ。

 

昼前には帯広駅に戻り、列車に乗車した。

根室本線で釧路に向かう。

 

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いつもの顔。

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いつもの座席。

帯広という内陸部から海沿いの街、釧路に抜けていくので、車窓も内陸の景色が少しずつ海辺の景色へと移り変わっていき、良き鉄道旅となった。

釧路の少し手前で、行き違いの為に尺別信号場というところに停車したのだが、ここがとても風情のある廃駅だった。2019年までは尺別駅として現役だったらしい。

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どう思うだろうか。

この旅を通じて多くの駅と通り過ぎてきたが、この旧尺別駅舎ほど印象に残った駅はない。

後ろはすぐ海。

調べてみると、戦前から戦後にかけては炭鉱への分岐線があったり、それなりの集落だったようだが、今や数軒の廃屋しか見えない。車もまったく通らなかった。

近くには10年前に公開された「ハナミズキ」のロケセットが残されているそうだ(興味なし)。

尺別駅のように、100年前に多くの犠牲者を出しながら開拓された北海道の大多数の集落の多くは、積雪や台風という大自然の力によって土に還ろうとしている。いや、その多くが既に土に還ってしまった。それでいいのだ。「永遠の命」なんてものを大自然は許容しない。生まれ、死に、再び生まれ、繁栄と没落は輪廻してゆくのだ。

 

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釧路駅に到着した。

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釧路駅。長いホームが数本あり、今も運用されている。

かつては蒸気機関車が牽引する長編成の優等列車がひっきりなしに入線し、側線は貨車で溢れ、入れ替えの機関車がひっきり無しに動いていたのだろう。駅前に佇む一軸の動輪が、かつての釧路の栄華を平成生まれの私に無言で語りかけていた。

 

昨日の帯広の旅がハードだったし、大晦日ということもあって、夕方4時すぎには投宿してしまった。

 

どこかで美味しい夕飯を食べたかったが、大晦日と元日に開いてる店なんてない。

開いてて良かった俺達のLAWSON。

やはり俺は、薄汚い東京の人間だ。

グッドバイ 2021

NHKの第九見終わったので寝ます。

 

本年はありがとうございました。

来年もよろしくお願い申し上げます。

 

「揺れている小さな影は、もう一人の私だ。夢に気づいたのは、メトロノームが止まった瞬間。錆びた路線は、あの日に続いているだろうか。」

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北海道DAY④ 〜旭川9時半乗車、帯広18時下車〜

風の道を辿って、旅は始まる。
忘れていた夢に出会い、見知らぬ刻(とき)に触れる。
私の旅は、終わりのない旅かもしれない。
風の道が、私の道。
麦100%。大分むぎ焼酎、二階堂。

 

youtu.be

 

某有名CMから引用させて貰った訳だが、今日はマジで疲れた。自分で望んだ旅程なのだが。。

朝9時半の旭川駅

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富良野本線 富良野行き

今日の最終目的地は帯広。

とりあえず富良野本線に乗り、終着の富良野駅根室本線に乗り換える必要があった。

11時前に富良野駅に到着。

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綺麗だった車体も富良野到着時には雪化粧

さてここから問題だった。

乗り換えまで約3時間の空き時間があるのだ。

一般人なら暇で卒倒するが、ベトナムで35時間の列車旅を経験した俺には何ともない。

しかし、何かをして時間を潰さないとならない訳だが、まもなく昼食の時間。オムカレーを食べよう。

前日、ツイッター富良野のオススメをフォロワーさんが教えてくださっていた。

 

富良野オムカレーが有名らしい。オムカレーって何だ?

私はあえて調べなかった。今回は一切、事前に検索をかけなかった。

その方が面白いと思ったからだ。

 

少し街を散策して、お店を訪ねてみた。

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「満席で既に2組お待ちですが如何しますか?」

「え、じゃあいいです...(小声)」

 

 

もう満席なのか...

よほど有名なのか、駐車場には札幌ナンバーが数台駐まっている。

カレー食べたかったな..

仕方ない。別のお店でオムカレーを食べよう。そうしよう。

 

「笑楽亭」というお店に入ってみた。

割と店内の内装が新し目の、綺麗なお店だ。

店の名前通り、めっっっちゃ愛想の良い御夫婦(?)が切り盛りされていた。

で、出てきたのがこれです。

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ええやん!凄くいい!

これはオムカレーのランチセットで1100円!

オムカレー」ってこういうことか。なるほどね。

富良野産の小さい瓶牛乳が観光客の自分には嬉しいオマケ。

チーズとカレー、ご飯をうまくスプーンに乗せ、パクッと口に入れる。

んんんんんんんんん

うぅッんっまい!

口の中で全てが蕩けていく。。

少しだけかかったチーズが濃すぎず薄すぎず、オムレツとカレーの組み合わせを引き立ててくれている。

最高やんけ。

富良野、最高やんけ。

なんで駅前ガラガラなんだ。

こんないい街なのに。

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残骸。御馳走様でした。

このお店の隣に、先程のフォロワーさんのもう一つのオススメがある。

 

ふらのマルシェ?

これは少し事前に調べたのだが、どうやら御土産屋さんらしい。

「これはいい。時間潰せるぞ。」

フォロワーさんに圧倒的感謝!!

 

店内はフードコートみたいなエリアと、御土産品エリア、喫茶エリアみたいな感じで3棟に分かれていた。

当然、御土産エリアに行く。オムカレー食ったばっかりだし。

 

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※ここで買った御土産は、帯広でこのブログを執筆しながら私の血と骨になっております。ナチュラルチーズの程よい酸味と柔らかい食感がクリーミー富良野市民に「ありがとう」の気持ちしかない。

 

ふらのマルシェで買い物をしたので(飽きたので)、次の目的地へ。

富良野神社である。

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ここはふらのマルシェの近所だったので、何となく寄り道。

元日の準備が始まっていた。

まあそれはいいとして、まだ2時間も時間が残っている。暇だ。

地図を見てみると近くに川が流れているようだったので、富良野市役所の前を通り抜けて歩き続けた。

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歩き続ける旅が好き。

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北海道はいちいちスケールがデカすぎてリアクションに疲れてくるな。

なんなんですかこの絶景は。

晴れていればもっと美しかったのだろう。

富良野駅からここまで歩いた者だけが見ることのできる景色だ。

千と千尋の神隠しで、川の神様のハクとかいうリア充がいたが、こういう川を見ると、本当に美しい川には神が宿るような気がしてくる。

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空知川というのか。

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橋。流石に疲れて渡らなかった。

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2時間ほど富良野の街を散策し、駅に戻ってきた。

ありがとう富良野。君を忘れない。

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鉄路は続いていく。

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東鹿越まで行き、そこから先は数年前の台風の影響で未だに不通となっているので代行バスに乗り換える必要がある。

旭川から帯広へ富良野経由で向かうのは、これが嫌だったのだ。

面倒くさいじゃん。

どうせそのバスも待つんでしょう?で、乗車したらなかなか発車しないんでしょう?

バスを降りたら次の列車も待つんでしょう?で、乗車したらなかなか発車しないんでしょう?

※やはりその通りになりました。

 

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しかし、車窓は相変わらず美しい。

1時間足らずで東鹿越に着いた。

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日が傾き始めている

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立派なバスが来てホッとした。

ここからバスで狩勝峠を越えていくこととなる。

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代行バスなので不通区間の線路沿いを走っていく訳だが、幾寅駅に停車した際、バスの車窓から「ぽっぽや」に使われた幌舞駅のセットを見ることができた。

代行バスだからこそ見れた景色で、損したような得したような不思議な気分だ。

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新得駅に到着。再び列車に乗り帯広へ向かう。

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誰だって孤独がいいに決まってる。

 

で、こんな感じで午後6時前に帯広へ着き、ホテルへ向かい、そのまま回転寿司に行き、生牡蠣を食べてホクホクの気分でホテルへ帰ろうと思ったらバスがなくて3km歩いてホテルまで帰ってきた次第です。

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年内営業最終日で、ほとんどのネタが品切れでした。

何か面白いことを書くにも、一日中列車に揺られていただけなので特筆すべきことがありません。

 

マジで疲れた。

北海道DAY③ 〜旭山動物園、孤独のかすみん〜

朝起きるやん?

開園時間に合わせてホテル出て、バス乗るやん?

9時半前に旭山動物園に着くやん?

閉まってる訳ですよ。今は冬期営業で10時半開園だから。

勘違いして、夏期開園時間の9時半に合わせて来園しちゃったんですよ。

もうね、ほんとね、アホかと思ったね。

 

私は「丁寧な旅」をしたいので、ベンチで開園を待とうとか、1番乗りする為に入場口に並んでようとか、そういうことはしない。ではどうしたか?

....勘のいい読者の御賢察通り、いつもの「放浪」が始まったのだ。

 

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丁寧な旅(放浪)

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米飯川(ペーパン川アイヌ語が由来だそう。

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一面の雪原が美しい。

旭山動物園から米飯川に向かって歩いてみたのだが、美しい景色に恵まれすぎている。ボーッと景色を眺めていた。

3、40分散策して動物園の入場口に戻ってくると、とんでもない行列ができている。許せない。安倍政権が悪い。

 

問.一番乗りにも関わらず行列の最後尾に並ぶ私の気持ちを述べよ。(配点100)

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開園時刻の10時半すぎに無事入場。11時からは例のアレが始まるので、皆、ペンギンがいる方向へ向かっていく。

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例のアレ

旭山動物園名物のペンギンの散歩。これほど間近でペンギンを見るのは初めてで貴重な経験だった。もうペンギンが目の前に来るのよ。距離が1mもない。ペンギンの毛並みとか、瞳とか、至近距離で観察できる。目の前をペタペタ歩いていく。

至近距離で見れるというとホッキョクグマも凄いんだ。

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近すぎでは???

横を振り向いたらシロクマがいてビックリしたぞ。驚かすなよお前。

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シロクマとお別れするとホッキョクギツネが現れた。かわいい。ポケモンみたいにモンスターボール投げたらGETできないかな。できるかな?できるよな?これで俺もポケモンマスター。

 

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エゾシカ

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エゾユキウサギ

旭山動物園は、飼育している動物の種類は少ない気がしたが、その変わり北海道固有の動物が沢山いる。

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脱走しないのか??

旭山動物園といったら、テレビでよく見るこれ。

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ただ、本気でビビったのはアザラシなんかじゃなかった。

 

 

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でけえ。

カバが泳いでる。。。

どいうことだ。。

すげえ。。

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魔物か???

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後ろ姿、鈍臭くて草。

 

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カバですらダイエットしているのに俺達ときたら..

 

 

旭山動物園はアザラシやカバのように、展示方法を工夫しているのが面白い。

面白いといえばこれ。

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何の変哲もないヒョウ。

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真下から見れるのである。。

この状態でウンコされたらどうなるんだろう。。

 

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固まっている。

 

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む‐しょく【無職】〘名〙定まった職業をもたないこと。(出典:明鏡国語辞典

 

午後2時前には見終わって動物園を出たのだが、この時、自分は大きな問題を抱えていた。

昼飯を食べてないのだ。

園内の食堂はどこも満席で長い行列ができている。入店できない。日本人は馬鹿なのか?なぜそこまで行列に並びたがるのか。同調圧力の権化か?退園した後、市内で飯を食えばいいじゃないか。地元民はどうせ車だろ?園内で冷凍のホットドッグや店員が調理しただけのインスタント製のラーメンを食べることにそれ程の価値があるのか?お前らのせいで俺が昼飯を食べられないんだ。安倍政権が悪い。

 

仕方がないので昼飯を我慢してバスに乗り、北海道護国神社へお参り。

北の大地の粉雪が鳥居に降り積り、神域を一層神々しく昇華させていた。

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境内。

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ガダルカナルで玉砕した一木支隊の慰霊碑があった。

 

お参りも済み、飯を食べることにした。

旭川だ。昨日は回転寿司に行ったし、今日はラーメンでいいだろう。

動物園の温度計はマイナス2度だった。

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ヒートテックを着込んでいるとは言え、やはり寒いんだ。特に手が凍える。激アツなラーメンが食いたい。身体を芯から温めるスープ。「アブラ」「麺」「豚」を貪り我が血と肉に変貌させるのだ。命を頂き我が命とするのだ。ラーメンを食べるのは神聖な宗教的儀式と言っても過言ではない。事前の情報収集で全てが決まる。そこには妥協も油断も許されない。

御用達のラーメンデータベースでちゃちゃっと検索し、獲物を決めた。

 

私の問い掛けに対する答えは、市内の小綺麗な繁華街の裏路地に存在していた。

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事前にリサーチしていた「醤油ラーメン」に「煮卵」を追加。

注文はハッキリと言うのが礼儀だ。

「ラードはどうしますか?」と聞かれる。

事前情報によればこの店は焦がしラードが引き立てる醤油スープの味が有名で、そのラードを濃いめにするか普通にするかを俺に聞いているんだ(激怒)(焦)(歓喜

 

「普通で」

マスク越しにハッキリと答えた。

ジロリアンとは言え、ラードを濃くすることで店主が研究を重ねた醤油スープの味が損なわれることを危惧したのだ。

注文してから数分で着丼した。早い。

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Love.......

 

これが「愛」なんだね......

最高だよ。

レンゲでスープを一口飲んでみる。

Oh........

スープにコカインでも入ってんじゃねえのか?

めっちゃ美味いぞ。

焦がしラードの風味が醤油を引き立てている。

今まであまり食べたことのないタイプの醤油ラーメンだ。

麺は細麺。豚はホロホロのタイプだ。これがまた濃いベースの醤油スープと合う。

メンマとネギがちょい多めなのがいい。

濃いスープを味わう中で適度に食べるメンマとネギが、寿司でいうガリの役割を果たしてくれている。

麺→スープ→ネギorメンマ→スープ→麺→豚

こんなループを宗教的に繰り返しているうちに麺がなくなってしまった。

なんだもう終わりか。がっかりだ。

もっと食べたかったのに。

しかし私は忘れていなかった。

煮卵が残っているのだ。

ちょっとだけ齧る。半熟だ。次は丸ごと口に入れて素早くスープを流し込む。

口の中で漂う焦がしラードの香り、スープ、半熟の黄身トロットロのやつ。

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完食した丼の前で讃美歌を歌いたい気持ちを押し殺し、お会計。900円。このクオリティなら安い。

颯爽と店を出て駅に向かったが、お店に忘れ物をして数分後に店に舞い戻った。

 

 

こうして今日も何気ない旅が終わっていく。

長くも短い一日。

明日はどんな一日になるだろう。

そんなことを思いながら、旭川のネオンの中を歩く。

きっと良い一日になるだろう。

 

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※明日の旅程は割と修羅場です。



北海道DAY② 〜冬期鉄道旅の宿命〜

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ビジネスホテルの安っぽいバイキングを食し、旅装を整えて出立。

この日は北見経由で旭川へ向かうのだ。5時間の鉄道旅。

ホームを覗くと既に石北本線が待機していた。

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緑と青だった。

車体に描かれた路線を示す緑色と青色の帯が俺は好きだと言ってるんだ(怒)(焦)(歓喜

 

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車体には雪化粧。静謐が漂う。

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自販機で買った水は少し凍っていて、後ろの車窓と相俟って、美しいと思った。

 

なぜ鉄道旅をしたいのだろう。こんな旅に意味はあるのだろうか。そもそもこれは「旅」ではなく「移動」ではないのか?自問自答したところで、自分はやはり、こうやって、ある程度の旅程を立てただけの、孤独な、誰との会話もない、静かな旅が好きだ。旅とは移動なのではないか?その目的地に向かう道程を楽しむことは間違っているのだろうか。戦前に書いた太宰治富嶽百景津軽佐渡、そういった旅小説に影響を受けすぎたのかも知れない。しかし太宰の小説には他人があった。俺の旅には他人がない。

 

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国鉄型」と俗に呼ばれる古き鋼鉄車にロマンを感じるのは不思議なことではなかろう。

頑丈な車体、垂直の硬い座席。金属製の手すりは冷たい。ディーゼルの音はやかましいし、席間も狭く感じる。USB充電器備え付けなんて発想はない。

しかしながら、私は、鉄道だろうと建築だろうと、中高生がiPhoneapple watchを使いこなしている令和の現代に取り残されてしまっている昭和の遺骨に魅力を感じてしまうのだ。多くの土地から姿を消した過去の思い出がまだ雪国には生き残っている。タイムスリップしたように。

 

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車窓

(この頃はまだ)太陽の光が雪原に反射し、とても幻想的だ。電車に揺られ眠たくなってきた頃に北見駅に到着。

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跨線橋を渡る。

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快速 きたみに乗車

なんだこいつ。スマホで乗換検索した時は「特別快速」って書いてあったぞ。このチョロQみたいな気動車で常紋峠と北見峠を越える気か?正気か?

意外に混み合い、ほぼ満席の状態で北見を発った。工事中に人柱が発掘された常紋トンネルを抜け、難所である北見峠に向かっていく訳だが、北見峠に近づくにつれ、車窓の景色がおかしくなっていく。

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少しずつ不穏な雰囲気に。

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どんどん不穏な雰囲気に。

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単線なので何度も行き違いの為に停車をした。

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数分遅れで旭川駅に着いた。5時間の鉄道旅といっても、雪景色を永遠と眺めていただけだから思い出もクソもない。それでいいんだ。雪が降っていないのに粉雪が舞って遠くが見えない。窓を手で触ると冷たい。後ろに座ってる女の子は暇すぎて死んだ目をしているし、隣の席の学生はずっと時刻表を見ている。前の席の老人はずっと眠っている。そんな記憶だけがずっと残ればいい。

 

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そのまま旭川駅を出て、何となく街を散策してみる。目的地はない。初めて行く場所は、とりあえず、意味もなく街を歩いてみるのが大切だと思っている。その土地の生活を見たいのだ。これは海外を1人で旅する時も同じだ。地元の商店街を歩いてみたが、余りにも寂れていて逆に辛くなってしまい、早々と退散した。街は少しずつだが、確実に死に向かっている。まるで俺の癌のようだ。

 

 

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買ったお土産を発送し

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回転寿司で磯の香りがする蟹味噌を食べて

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夕方の雪道を歩き

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忠別川を眺め

 

投宿し、大浴場に浸かり、牛乳を飲みながらスマホを見ていたところで事件が起きた。

スマホでJRの運行情報を確認したら、翌日に乗車予定の留萌本線が、明日の夕方まで運転見合わせとなっているのである(今日も運転見合わせ)。オワッタ。ドカ雪のせいだ。日本海側だから豪雪の影響を受けると思って警戒していたのだが、予想通りになった。しかし俺は動じない。

 

留萌のホテル代を損切り、投宿した旭川のホテルに頼み一泊追加した。問題なのは明後日で、明後日は特急を使い留萌から札幌経由で帯広に抜ける旅程を立てていたのだ。すでに特急券も手配して手元にある訳だが、これはみどりの窓口で払い戻した。札幌から西側は雪の影響をモロに受けているから、札幌経由はリスクがある気がした。積雪で運休したら終わる。。

 

現在の予定として、明後日は旭川駅から富良野を抜けて東鹿越まで行き、代行バスで(数年前の台風により東鹿越、新得間の線路は未だに不通)新得へ行き、そこから鉄道で帯広へ抜けるつもりだ。これは6時間の鬼ルートだがやむを得まい。もしこのルートが積雪で死んでも、旭川からなら高速バスで帯広に向かう保険がある。留萌にはそれがないのだ。多少お金を損しても、旭川から動くべきではない。

 

 

明後日の事は何も考えない。明日は明日の風が吹く。理想の旅人とは結局のところ、寅さんなのではないだろうか。

 

 

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汽車の行方は、志士に任せよ。「待つ」という言葉が、いきなり特筆大書で、額に光った。何を待つやら、私は知らぬ。けれども、これは尊い言葉だ。唖の鴎は、沖をさまよい、そう思いつつ、けれども無言で、さまよいつづける。

鴎 / 太宰治