国鉄の除雪ユニット、名寄のキマロキを訪ねて。
↓前回の記事
さて、2022年7月の道北の鉄道旅を前回はまとめた訳だが、名寄駅での乗り換え時間に駅近くに保存展示されている「キマロキ」を見学しに行ったことを書かせて頂いた。
かつての国鉄時代は、潤沢な予算(税金なので赤字無視)により冬期は除雪要員として多くの冬期契約の職員を雇った。確かに国鉄は膨大な赤字を生み出したが、それは冬期に職のない農民や林業の労働者に雇用を生み出し地域経済を支えた。
国鉄は大量の除雪をする為に鉄道車輌を潤沢に運用していた。その一つが「キマロキ」である。
キマロキは除雪列車の編成を意味していて
キ:機関車
マ:マックレー車(雪壁を削り線路上の雪をかき集める)
ロ:ロータリー車。集めた雪をブレードで遠くに吹き飛ばす)
キ:機関車
という意味である。
全国においてキマロキで統一されていた訳ではなく、色々なパターンがあったらしい。
・飯山線「ロキキマロキ」:前部のロータリー車と機関車で走行の為の除雪をしてキマロキで本格的に除雪
・上越線「ララキマロキラ」:ラッセル車を背中合わせに連結(2輌目は除雪失敗時の後退用)+キマロキ+ラッセル車
・越美北線「ロキヤキマロキラ」:ロータリー車+機関車+除雪作業員約30名が乗る職用車+キマロキ+ラッセル車
降雪や積雪の量に応じて柔軟なユニットを組める程に当時の国鉄の保線にかける車輌は充実していたということだろう。労働環境が過酷であったことは言うまでもないが。
名寄に保存されているキマロキは
9600形+キ900+キ600+D51+ヨ3500
という編成である。
<59601 牽引機>
北海道形との言われ方もするが、大きなスカートと大きな前照灯(補助灯があったり、前照灯が両サイドに二つある場合も)が取り付けられている。
除雪時に雪壁を崩す為の大きな翼が広がる仕組みなっている。奥に見える赤いブレードは次車のラッセル車のもので、マックレーがかき集めた雪を次車のロータリーが吹き飛ばす。最高速度65km/hを意味する黄帯1号が描かれている。
<キ604 ロータリー車>
ブレード、機関室、炭水車が一体となっていて全長約17m。
大正12年にアメリカンロコモティブから2輌の除雪車が輸入され、国産化の為に分解研究し量産化された。1929年製造だが立派なロータリー車で、蒸気機関と炭水車を備え、それを動力源としてブレード等を動かす。黄帯1号。炭水車を含めて総重量が80tもあり、ロータリー操作要員の他に機関士と助士も必要である。
<D51 後補機>
編成の推進力としては、除雪する目的性からも牽引機よりも後押しする機関車に強力な出力が求められたのだろう。D51は頼もしい。鉄道好きなら見てわかると思うが、ところどころに北海道形を感じさせる重装備が施されていた。
<ヨ4456 車掌車>
除雪作業で車掌車はかならず付属したのだろうか。
窓が塞がれ、内部には入れない。
という訳で、鉄道マニアしか読まないような記事となってしまった。
子供よりも機械好きな大人が見学した方が楽しめる展示である。2010年に準鉄道遺産に指定された。名寄北国博物館に屋外展示されているが、キマロキ編成の見学については無料である。冬期は積雪対策のシートに覆われ見学できないそうだ。